2019.11.29
こんにちは!副社長の上形です。
役員及びランチケータリング事業部のメンバーで
中国・深圳のフードテックベンチャーの視察に行って参りました。
食とテクノロジーの掛け合わせで新しい価値を創出しようとしている弊社にとって、
今回の視察は非常に有意義な時間になりました。
(このように役員・幹部が会社の未来を作るための時間を作くれたのも、社員皆のお陰。本当にありがとう!)
簡単ではございますが今回の視察内容をまとめましたので、
どんな形であれご覧頂いた皆様の刺激となれば幸いです。
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■目次
①現地起業家達と話して衝撃を受けた3つの数字
(1)3カ月
(2)3回目
(3)100年企業
②フードテックベンチャー訪問レポート
(1)シェアバッテリー「Urbane」
(2)無能薬&無土壌栽培野菜「小茁」
(3)食事配達ロボット「PUDU」
③深圳・中国に対するマイナスな意見と、そこから学べること
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①現地起業家達と話して衝撃を受けた3つの数字
本題である3つの数字の話に入る前に。
「深圳は第二のシリコンバレーだ」との記事やお話しを耳にするようになってから早数年、
一度はこの目で観たく念願叶っての今回の視察となりました。
テンセントやファーウェイのような世界有数のベンチャーを生み出した街はどのような街なのか、
事前に調べた情報をざっと箇条書きします(情報ソースは緩いです。予めご了承ください)
・約40年前の1970年代の人口はたった約3万人の漁村
・1980年に中国政府が深圳を経済特区に指定し人口が急増
・2019年現在の人口は約1,200万人
・現在の深圳市民の平均年齢は約30歳
・2018年に新設された会社は約40万社(一日約1,000社のペース!)
・深圳に集まるベンチャーキャピタル(VC)やPEファンドの数は、約5万機関、
資本規模は約48兆円程度(中国全体のベンチャー資金の約3分の1)
深圳空港の様子。とても近代的な空港でした。
一言で言うと急速に成長している街です。
街全体から前向きなエネルギーを感じました。
上記を前提に置きつつ、実際に現地の起業家達と会話をし印象的だった内容を
3つの”数字”を表題に紹介させて頂きます。
(1)3カ月
新製品・新サービスを発案してから市場に出るまでの期間です。
つまり、製品、サービスが未完成な状態でもどんどん市場に出てくるというのです。
日本では、未完成な状態で市場に出すリスクの方にフォーカスされがちですが、
深圳にはそれが無いというのです。
起業家にとってはメリットしかありません。スピーディーに仮説検証が出来るからです。
商業ビル内で見かけたロボット。正直動きはイマイチだが、実用されている
なぜそれが出来るのか?
深圳は「そういう街だから」だそうです。
その空気感こそ、深圳の最大の強みのように感じました。
無論、その空気感は自然と生まれるものではなく、
国や行政が政策して作り上げたものであるということは言うまでもありません。
(2)3回目
今回の視察では、とても魅力的な3社の起業家達とお話しをしました。
うち2名は「3回目の起業」だと言いました。しかも30代です。
前述したように、新製品・新サービスを早く市場に出し、早く失敗(=学び)を得る文化があることは前提としても、いわゆる連続起業家の数が非常に多いという事です。
小茁CEO 凌小明氏も3度目の起業。未来のジャック・マー!
なぜ、連続起業家が多いのか?
それはイグジット環境が整っているからなのか、文化的な物なのか、いくつかの仮説が思い浮かびますが、
本人達の様子はもっとシンプルでした。
「大成功するまで挑戦し続ける」という精神です。前しか見ていませんでした。
その精神を、国、地域行政、支援機関、市民が後押ししているようにも感じました。
(3)100年企業
テンセント創業者のポニーマー氏は、テンセントを
「100年企業」にするために日本企業の研究をしているそうです。
実際、同社の幹部は何度か日本企業の視察にも来ているそうです。
テンセント本社ビル。夜になると華麗なるイルミネーションが街を彩ります。
後述してご紹介するPUDU社長に好きな経営者を聞いたところ、
イーロンマスクと松下幸之助と答えました。
僕は勝手に深圳の起業家たちは、GAFAをはじめとするシリコンバレーばかりを
観察しているのだと思っていました。
実際はそうではありませんでした。
戦後世界を席巻した日本企業とシリコンバレーから一生懸命学ぼうとしていたのです。
起業から100年企業へ、貪欲に学ぶ姿勢には刺激を受けました。
②フードテックベンチャー訪問レポート
今回の視察は「ソフトウェアファースト」の著者、及川卓也さんのご紹介で、
深圳出身・元信州テレビアナウンサーの官琳(kan rin)さんにコーディネートをお願いしました。
(官琳さんは今後更に日本と深圳を繋ぐ仕事に注力されるそうなので、視察をご検討の方はこちらのHPから直接ご連絡してみてください。もちろん、上形経由でお繋ぎすることも可能ですのでご遠慮なくDM下さい。)
(1)シェアバッテリー「Urbane」
1社目の「Urbane」は以下のようなシェアバッテリーを開発しているベンチャーです
自動販売機のように見えますが、下にシェアバッテリーが入っています
シェアバッテリーとは、自動販売機のようにスマホの携帯式充電器が置かれているサービスです。
飲食店やホテル等に設置されています。
深圳をはじめとする中国では、スマホ決済が当たり前となりつつあり、
スマホの電池が切れることはまさに致命的です。
そういった背景もあり、いたるところにシェアバッテリーのニーズが高まっているのではないでしょうか。
Urbaneのコアコンピタンスはバッテリーの開発力です。
COOのYvonne Tangさんはバッテリーの博士です。
その強みを活かし、電動キックボードや電動バイクの開発にも注力しています。
自社商品を3Dで展示。当社のキックボードはドイツでは大人気だそうです。
仮に、Urbaneの電動バイクや電気自動車がスタンダードになれば、「充電スタンド」がなくなり、
電池がなくなればUrbaneのシェアバッテリーを交換するという世界も待っているかもしれません。
(2)無能薬&無土壌栽培野菜「小茁」
2社目は、上記の言葉の通り農薬無し、土も無しで野菜を栽培できる
「装置」と「苗」を開発しているベンチャーです。
白い機材が「装置」。この装置に指定の苗をはめると野菜が育つというサービスです。
無農薬野菜を子供たちに食べさせたいという想いから始まった同社は、
家庭でも簡単に無農薬野菜を育てられるサービスを生み出しました。
同社のビジネスモデルは、いわゆるジレットモデル
(シェイバー本体を廉価で販売し、刃で儲かるという仕組み)で、
苗を育てる装置を廉価で販売し、レタスやキュウリやイチゴの苗の定期購買に繋げるというモデルです。
苗は同社の特別な技術で管理育成。
同サービスで育てた野菜をサラダで頂きましたが、とてもおいしかったです。
それ以上に「無農薬」という安心がありました。
(3)食事配達ロボット「PUDU」
3社目は、飲食店内で食事を運んでくれるロボットを開発している会社です。
上記の配膳ロボットが指定の席まで食事を自動で運んできてくれます。
中国国内最大の火鍋チェーンでは既に導入されているようです。
運ばれてきた食材をテーブルに移すと、ロボットは何かをしゃべって
キッチンに帰っていきました。
※当社とは別の会社の話しですが
別の火鍋屋ではテーブルに貼ってあるQRを自分のスマホで読み取り、オーダー、
会計をするという仕組みを導入していました。
テーブルの上に貼られている上記QRを読み取ると…
メニューが表示され、自分でオーダー、決済を行う
このスマホオーダーの仕組みと、PUDUの配膳ロボットを組み合わせると、
オーダーテイク、配膳、会計が不要になります。
つまりホールスタッフが不要になる可能性があるということです。
飲食店の概念が大きく変わりますね。
PUDUの皆様とロボットを囲んで。火鍋店にて。
③深圳・中国に対するマイナスな意見と、そこから学べること
さて、ここまで深圳の魅力や可能性、そしてベンチャーの前向きな様子について触れてきましたが、
急成長に伴うマイナスな側面を主張する意見もあるようです。
その代表的な意見が「格差拡大」というものです。
スマホ決済が中心となっている中国では既に、誰がいつ何をどれくらい買っているのか、
その人の収入やお金の流れ、そして誰と繋がっているのか
(誰とコミュニケーションを取っているのか)といった情報が
集約されています。
そういった情報を元に、「アリババ」には950点満点で
ユーザー個人を格付けする信用格付けシステムが存在しているそうです。
勿論この施策は点数を上げたいという欲求に訴求し、
消費を促すマーケティング的な側面もあります。
ただ今後は点数別に購入出来る商品や、得られる情報、行ける場所等が限定されていく可能性は
十分考えられます。
売り手からすれば、ターゲットを絞り込んだ方がマーケティング効率が高いからです。
僕は「格差拡大」の是非を話したい訳ではありません。
深圳や中国における進化は、製品やサービスといった経済活動におけるイノベーションにとどまらず、
社会システムそのものに大きな変化をもたらすのでは無いかと思うのです。
こういった時代の潮目に一旗上げようという、
さながら幕末の志士達のような「野心」が
深圳の起業家達の底知れぬエネルギーなのではないかと思うのです。
この「変化」や「野心」の存在を、別世界のものとしてではなく、
身近な世界として捉えることが出来たことが、今回の視察の一番の収穫でした。
僕たちノンピのミッションは、
"食の可能性を探求変革することで世界中に笑顔をふやすこと"
そして、経営メンバーの仕事は、そのミッションに夢中になれる社員の笑顔をふやすこと。
変化の大きいこの時代の中で5年後、10年後どうすれば社員の笑顔をふやせるか
短期的な視点に捉われず、保守的にならず、再考したいと思います。
貴重な機会を作って下さった及川さん、官琳さん、そして社員のみなさんに
重ねて御礼を申し上げます。
ありがとうございました!
▼官琳(kan rin)さんHP▼
※官琳さんは今後更に日本と深圳を繋ぐ仕事に注力されるそうなので、視察をご検討の方はこちらのHPから直接ご連絡してみてください。もちろん、上形経由でお繋ぎすることも可能ですのでご遠慮なくDM下さい。