こんにちは。サステナブル推進チームの篠崎です。
今回はノンピが運営する三菱地所株式会社の社内カフェテリアSPARKLEで料理長を務める山根シェフに、現在実施しているサステナブルな取り組みについて伺ってきました。
料理長 山根 了
[プロフィール]
大阪あべの辻調理専門学校を卒業後、都内の有名フレンチレストランで
修行を積む。その後、会員制レストラン、外資系ホテルなどで働いたのち、
出身地の千葉へ戻り、レストランで料理長を務め、2017年ノンピに入社。
ノンピケータリング事業部、浦和レッズビューボックス、
LOOPXの社内レストランの料理長を兼任後2019年から三菱地所様の
運営するSPARKLEの料理長に就任。
【エコで美味しい、一石二鳥な取り組み】
篠崎:SPARKLEではフードロス関連で様々な取り組みをしていると伺っていますが、サステナブルな取り組みについて、具体的に聞かせてください。
山根:そうですね。たくさんあるので、どこから話そうかな…。フードロスに関しては、例えば、調理の工程で出る野菜の端材を煮だしてブイヨンにしています。ニンジンの頭や大根・かぶの皮、玉ねぎの外皮など端材を水で煮込んで野菜の旨味を抽出するとすごく良い旨みが出るので、カレーやスープなどの料理に使用しています。化学調味料も一切使わないので優しい味になります。
野菜の端材をブイヨンドレギュームに。塩と白ワインでコトコト煮込んでいきます。
あとはオリーブオイルを使用してペペロンチーノベースに仕上げた、洋風の「ブロッコリーとあさりの炊き込みご飯」は、ブロッコリーの茎まで使っています。とても美味しいので定番メニューとしても人気です。
篠崎:美味しそうですね!!!!
『ブロッコリーとあさりの炊き込みご飯』
ブロッコリーがしゃきしゃきの食感で良いアクセントに。アサリの旨味たっぷりで何杯でも食べられます。
山根:他には、食材を半工程で仕上げてストックしておくことで、様々な料理に応用しています。
例えば、通常生姜焼き用の豚肉は生姜とお酒と醤油に漬け込んで、そのまま焼いて出してしまいますよね。そこまで仕上げてしまうと残りを別の料理に応用するのは難しいですが、SPARKLEでは八方出汁と醤油で簡単に下味をつけるところまでで止めておきます。
そうすれば生姜焼きにも、カレーにも、豚汁にも応用することができます。フードロスも無くすことができるし、料理のラインナップも増えてお客様に喜んでいただけるので一石二鳥なのです。
SDGsの12番「つくる責任、つかう責任」は三菱地所様も特に強く意識されていて、とにかく食材を捨てないことを意識して調理しています。
八方出汁と醤油のみで味付けした豚肉。色々な料理に応用することができます。
篠崎:食材を余すところなく使う取り組み、素晴らしいですね!考え方のベースはどこから来ているんでしょうか。
山根:最近SDGsに注目が集まっていますが、料理人にとっては「いかに食材を余すことなく、美味しい料理として使い切るか」を考えることが昔から当たり前でした。例えば「まかない」は残り物でどうやって美味しい料理を作るか、と考えるのが普通だったので、料理人の間ではもったいない精神として根付いていました。
なのでそういうスキルは20歳くらいには身についていましたね(笑)
【もったいない、おかげさま、おたがいさま】
山根:また、意識して取り組んでいるのは〈三方よし〉の関係を作るということです。
これまでの大量調理・大量消費や、一方だけが得をするという考え方ではなく、「生産者、作り手、買い手」のバランスを大切に考えて、みんなの生活や心が潤うためにはどうしたらよいかを考える。それが循環ということだと思っています。
重要なことは、相手のことを思いやりながら丁寧にコミュニケーションを取っていくことなのではないでしょうか。昔から日本人は相手のことを思って「もったいない」「おかげさま」「おたがいさま」という気持ちを大切にしてきました。こうした日本の文化や考え方は本質的にSDGsにも通じていると思っています。
例えばSPARKLEでは、三菱地所様の紹介で畑山農場さんの野菜を使用しています。
畑山農場さんは無農薬の栽培にこだわっていて、新鮮な野菜はいつも泥付きのまま送られてきます。畑山さんと交流しながら、最高に美味しい野菜をお客様に提供できることにものすごく価値があるんです。
コミュニケーションを取りながら料理を作ることで「共存、共栄」の意識が強くなると感じています。
畑山農場を営む畑山貴宏さん
畑山農場の風景
畑山農場で収穫された野菜
【畑山農場のホームページ】
【知る、食べる、美味しい、使う、広がる、変わる】
篠崎:SPARKLEではSDGsやサステナビリティをテーマにしたイベントも数多く実施していますね。どのような意識で取り組まれているのか教えてください。
山根:SPARKLEでは大豆ミートやZENB※1などの商品を紹介するイベントを定期的に実施しています。
でも、ただ作って食べてもらうだけではなくて、まずは「なぜ代替肉や規格外野菜を使っているのか」という、背景を知ってもらうことから始めます。また、いくら環境に優しくても、美味しいと思ってもらえなければ継続しないですよね?なのでしっかりと背景を理解したうえで「実際に食べても美味しい」と感じてもらいたいです。
そして、一度「美味しい」と思ってもらえれば日常の中に浸透させていくことができ、お客様の方から自らの生活の中に組み込んでくれるようになります。それが広まっていって、周りの人の考えも変わっていく。このステップが重要だと思っています。
イベントはこのサイクルを回すための最初の重要なステップです。商品をただ表面的に見せるのではなくて、作り手が正しい知識を得て、エンドユーザーに発信していくことが大事だと思っています。
ZENB×SPARKLEコラボイベントの様子
スパークルではイベントのほか、月に1度サステナブルメニューを取り入れたり、普段のメニューにも通常の肉に大豆ミートを混ぜ込むなどして、日常的に慣れ親しんでもらうよう意識した取り組みも実施しています。
※1【ZENBブランド】
ZENBは植物を可能な限りまるごと使い、おいしくてカラダにいい、人と社会と地球の健康に貢献する、新しい食生活を提案するブランド。
まるごと野菜とオリーブオイルだけで作った「ZENB PASTE」、まるごと野菜に雑穀・ナッツを加えた「ZENB STICK」、一食分の野菜117gが一袋で摂れる「ZENB VEGE BITES」、豆100%で、豊富な食物繊維と植物性たんぱく質の新主食「ZENB NOODLE」、こだわりのソース「ZENB SAUCE VEGE」などのラインナップがある。
ZENBサイト:https://zenb.jp
【無理なく積み重ねていくこと】
篠崎:貴重なお話ありがとうございます。山根さんのお話にはサステナブルな活動を推進していくうえで重要なエッセンスがぎっしり詰まっていますね。表面的にSDGsなどを意識した活動をするのではなく、これまでの積み重ねが体現されている活動の中にサステナビリティの「本質」を感じました。
山根:そうですね。目の前の利益やトレンドに捉われると活動は持続しません。活動を長期的に継続していく上で大切なことは「無理なく」積み重ねていくことではないでしょうか。
これからも食を通じてサステナブルな活動に取り組んでいきたいと思っています。
【インタビューを終えて】
今回のインタビューを通じて特に感じたことは、山根さんのお客様を喜ばせたいという料理人の熱い想いと生産者への感謝の心でした。食材を余すことなく使って美味しい料理を作り、そしてその料理が生産者とお客様を繋ぐ。このサイクルを無理なく持続的に回していくことでサステナビリティの精神を体現しているように感じました。
表面的な活動ではなく、本質をトコトン考えている姿勢にとても感銘を受けました。
これからサステナブルな活動を推進していく為に、ノンピで働いている料理人の皆さんにもっともっとインタビューをしたい!そう強く感じた取材でした。
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