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ノンピサステナビリティ推進部が徳島県上勝町を視察。日本初のゼロ・ウェイスト宣言を行い、リサイクル率80%を実現する町が取り組んだこととは



こんにちは!サステナビリティ推進室の篠崎です。


今回の記事は「スペシャル回」です!



日本ではじめてゼロ・ウェイスト宣言をし、今や日本屈指のリサイクル率80%以上を実現する徳島県上勝町を訪問しました。ここは、以前ノンピ主催ウェビナーへ登壇頂いた田中達也さん(RISE & WIN Brewing Co.代表)が新しいブランディングを施した町でもあります。



※ゼロ・ウェイストとは、「ごみをゼロにする」ことを目標に、できるだけ廃棄物を減らそうとする活動のことです。 大量生産、大量消費の現代社会に疑問を持った人の活動により、今世界中に広まっています。


※「食の未来を探究変革ウェビナー」の様子はこちらからご覧いただけます。





【なぜ上勝町を訪問したのか?】


上勝町は「ゼロ・ウェイスト実現」に向け、これまでさまざまなチャレンジを繰り返してきました。


ゴミ削減の取り組みからビールづくりまで、そのチャレンジを知れば知るほど実際にこの目でみてみたい!と想いが高まってきました。そんな想いを田中さんにご相談したところ、快く受け入れてくださり、今回の「上勝町視察ツアー」が実現しました。



【上勝町プロフィール】


上勝町はあたり一面森に囲まれ澄み切った水が流れる川、日本の原風景ともいえる景色が広がるまさに「秘境」でした。(徳島阿波おどり空港から車で片道約1時間20分ほど)


上勝町から先に続く道は険しく、それ以上先へ進もうとする人はめったに居ないそうです。


上勝町から先に続く国道は行き止まりになっていて、それ以上進むことができないそうです。上勝町は人口1,457人(2022年1月時点)、人口全体の約65%が55歳以上です。そして町の面積の約90%を森林が占めています。かつては林業が盛んでしたが、国産木材需要の減少などにより衰退していってしまったそうです。


現在、上勝町の特産物は晩茶と柚香*¹、そして食事の飾り付けなどに用いられる「葉っぱビジネス*²」です。



*¹ユズとダイダイの自然交雑種


*²料理のつまなどに使われる季節の葉っぱや花、山菜などを栽培・出荷・販売する農業ビジネスのこと


道路に沿って川が流れていて、山を登っていくにつれて少しずつ細くなっていきます


上勝町の棚田。日本の原風景のようで心が洗われました


棚田を見ながら食べた朝ごはん。マフィンに自家製マヨネーズをたっぷり塗って、野菜とカツ(魚の練り物のカツ!)を挟んでいただきました


上勝町の土壌の良さを象徴する色鮮やかに大きく育った野菜




【上勝町がゼロ・ウェイスト宣言に至るまで】


上勝町ではかつてごみを野焼きで処分していたそうです。この野焼きにより火事の発生や悪臭による公害が発生したため、焼却炉の建設に踏み切りました。しかし焼却炉使用に伴うダイオキシンの発生などが問題となったため、焼却炉を閉鎖、ごみをできるだけ燃やさないために、ごみを「多分別」する活動がはじまりました。そして2003年、「ゼロ・ウェイスト宣言」を行いました。当時町長を務めていた笠松和市氏の思い切った決断でした。



【13種類45分別を実現するゼロ・ウェイストセンターの取り組みとは】


上勝町ゼロウェイスト・センターは、ゴミステーションや交流ホール、ホテルなどの複合施設で、田中さんの構想のもと、新進気鋭の建築家中村拓志氏*⁴によって設計されました。



*⁴1974年 東京生まれの建築家。 1999年隈研吾建築都市設計事務所入所。 2002年NAP建築設計事務所を設立。自然現象や人々のふるまい、心の動きに寄りそう「微視的設計」による、「建築・自然・身体」の有機的関係の構築を信条としている。


そびえたつ山々の中に、上勝町ゼロ・ウェイストセンターが現れる


ゼロ・ウェイストセンターHP:https://why-kamikatsu.jp/



ゴミステーションには13種類45項目に分別するための箱が設置され、町民自らゴミを持ち込み仕分けし捨てていきます。


これだけ多いと捨てるのに時間がかかったり間違って捨ててしまうのでは、と思いますよね。


この点については対策が取られており、箱やラックを設置してわかりやすくするという工夫がされています。



雑誌は紙の紐で結わえられ回収用のワゴンに収められています。


分別の種類が際立って多いのが紙類です。段ボール、雑誌、新聞紙からはじまり紙パック、紙カップ、紙芯まで、細かく分類されていました。紙の種類毎に分けることによって事業者の仕分け作業負荷が減り、高い価格で買い取っていただけるそうです。


(雑誌などを結ぶ紐も紙製という徹底ぶりでした!)



ゴミステーションの箱やラックには1キロあたりの買取料金や処分費用のほか、どこで何になるのかも記載されており、資源の循環が一目で分かるようになっていました。


※「どうしても燃やさなければならないもの」の看板を例にとると、1キロ当たり61円で処分され、「焼却埋立処理」されます。こうした「見える化」の取り組みやスタッフの丁寧な指導により住民の方々の意識は「ごみを捨てるのではなく、資源を還す」ように変わっていったそうです。




【田中さんと上勝町の出会い】


田中さんが上勝町と出会ったのは2011年のこと。


当時は、海苔消費量の激減で廃業危機にあった地元の徳島で「海苔漁師を救いたい」と冷凍保存の生海苔開発に奮闘しており、それが当時の上勝町長、笠松和市氏の目にとまりました。


そして町長から「地域再生を手伝ってもらえないか」と相談を受け上勝町と出会います。


初めて視察した際の印象は「自然が豊かで素晴らしい町だけど圧倒的な魅力には乏しい」というものでした。しかし町に訪れてゴミステーションの取り組みを見たときに、「ゼロ・ウェイスト」は上勝町にしかない最大の魅力になると確信したそうです。



田中達也さんプロフィール


1969年生まれ。徳島県出身。食品安全のための衛生検査所、スペック・バイオラボラトリー代表。


地域の課題をテーマとした事業に関わったことがきっかけで、徳島・上勝町の活動に携わる。


2015年、町が取り組む環境活動「ゼロ・ウェイスト」の理念に基づき、「RISE&WIN Brewing Co. BBQ&General Store」を立ち上げる。2016年、東京・東麻布に「RISE&WIN Brewing Co. KAMIKATZ TAPROOM」をオープン。2017年、ポートランドからビール醸造設備を導入し、第2醸造所とバレル庫、イーストラボを備えた複合施設「STONEWALL HILL CRAFT&SCIENCE」を開設。


2020年には10年越しのプロジェクトで、立ち上げにも関わった「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」をオープン。







【オレゴンでクラフトビールと出会う。田中さんの奮闘記】


まず田中さんが取り組んだのは「量り売り小売店」の運営でした。


ごみを仕分けにいくのが面倒と考えている住民の方々に対して、包装資材を必要としない量り売りのお店を考えたのです。しかし経済規模の小さな上勝町で事業継続が難しく閉店となりました。(量り売りの取り組みは、田中さんが運営する「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」内で現在も継続されています。)



上勝の町おこしの試行錯誤が続く中、自社の記念式典イベントでビール造りをやってみよう、という話が持ち上がります。田中さんはビールの本場をみてみたいと思い立ち、アメリカオレゴン州ポートランドへ視察に行きます。そこでクラフトビールとグラウラー*³の文化に衝撃を受けます。



*³生ビール運搬用のガラス製、セラミック製、またはステンレス製のボトルのこと。一般的に、テイクアウト用クラフトビールの販売手段として、ブルワリーやブルーパブで販売される。


本場ポートランドのクラフトビール(田中さんご提供写真)


ポートランドのダウンタウンエリアには60店舗ほどのマイクロブリュワリーがひしめき合っていて、お店ごとにオリジナルのビールが提供されています。田中さんはそれぞれのスタイルでビールを楽しむ姿と、グラウラーにビールを詰めて持ち帰るサステナブルな文化に、上勝町の未来を重ねたそうです。


「ゼロ・ウェイストと、美味しいクラフトビール」これこそ上勝町ならではで「また来たい!」と思わせる取り組みに繋がるのではないか、そう強く感じたそうです。




【ビール工房の立ち上げ】


ビール造りのヒントを探るなかで、後にブルーイング・ディレクターになるライアン・ジョーンズさんとの出会いがありました。


田中さんからビール製造アドバイザーの話をもらった当初は、ビール造りで最も重要とされる「衛生管理」への不安から難色を示していたそうですが、本業が衛生検査事業だと伝えたことでビール製造への可能性を感じ、本格的な指導が始まったとのこと。



会社名が刻印されたタンク




【サーキュラーエコノミーを体現したビール造りとは】


KAMIKATZ BEERの最大の特徴は「ゼロ・ウェイスト」の要素を取り入れたラインナップです。上勝町特産の柑橘「柚香(ゆこう)」の廃棄対象になる果皮を利用した「カミカツホワイト」(柚香のさわやかさとビールの苦みとコクが合わさって絶品!)や規格外品の鳴門金時芋を使用した「カミカツスタウト」等、ゼロ・ウェイストをコンセプトにした商品が展開されています。


詳細はこちら:https://kamikatz.jp/




さらに、ビールの醸造の過程で排出されたモルト粕は資源循環システム「reRise(リライズ)」によって液肥化(アミノ酸と乳酸菌)され、自社農場で使用されます。さらに、そこで栽培した麦を使い新たにビールを醸造するという、見事なサーキュラーエコノミーが実現されています。


KAMIKATZ BEERのサーキュラーエコノミーをまとめた


木材の加工場を改築してつくられたビール工房


ウィスキーやワインの樽の中で熟成中のビールたち


クラフトビールを醸造するタンクが並んでいる様子は圧巻でした


ビールに使われる「酵母菌」について説明してくださっている田中さん





【ゼロ・ウェイストセンター設立への道のり】


ここまでのレポートで、田中さんの活動は順調に進んだと思われた方も多いと思います。


実は、裏では町民の理解を得るためのとてつもない努力と苦労がありました。


田中さんがゼロ・ウェイストセンターの構想をもったのは2012年のこと。


当時はなかなか住民の理解を得られず「よそものが町の予算で大がかりな箱ものをつくろうとしている」と反対意見が多かったそうです。


そこで田中さんは「自分がこの町と運命共同体で逃げも隠れもしない」という覚悟を町民に示すため、ゼロ・ウェイストセンターより先にブルワリーの建設に着手しました。


ゼロ・ウェイストセンター建設への第一歩として、このブルワリーにはふんだんにゼロ・ウェイストの要素を取り入れました。それを象徴するのが「パッチワークファサード」です。



なんと、町の皆さんから提供いただいた「使っていない窓ガラス700枚」を再利用したそう!


また、第二工場は現代アートの大賞「ターナー賞」を受賞した建築家集団”アッセンブル”にコンセプト企画・設計を依頼。アッセンブルはロンドンを拠点に活動していたため、田中さん自ら出向いてブルワリー建設を依頼したそうです。アッセンブルの「地域の住民を巻き込んで建築する」手法を取り入れてブルワリーを作りたいという、強い想いからのアクションだったそうです。


(田中さんのすさまじい情熱を感じられるエピソード!)



田中さんは、ブルワリーが町の人たちにとって「よいケーススタディーになった」と振り返ります。町全体が参加してごみを資源として再利用するイメージを明確にすることで、ゼロ・ウェイストセンター設立への理解が少しずつ深まっていったのだといいます。



ゼロ・ウェイストセンターに先駆けて建築されたブルワリー。正面のパッチワークファサードは町民から提供された窓ガラスを再利用


上勝町の町おこしのエピソードにノンピ社長の柿沼も興味津々でした





【覚悟・情熱・行動力が上勝町を変えた】


ここまで以下9つの項目に分け上勝町の取り組みをご紹介してきました。


  • なぜ上勝町を訪問したのか

  • 上勝町プロフィール

  • 上勝町がゼロ・ウェイスト宣言に至るまで

  • 13種類45分別を実現するゼロ・ウェイストセンターの取り組みとは

  • 田中さんと上勝町の出会い

  • オレゴンでクラフトビールと出会う。田中さんの奮闘記

  • ビール工房の立ち上げ

  • サーキュラーエコノミーを体現したビール造りとは

  • ゼロ・ウェイストセンター設立への道のり


ビールというコンテンツでサステナブルを美味しく楽しむ仕組みを作ったことや、ブルワリー建築やゼロ・ウェイストセンターの建築で町の人たちを巻き込んだことなど、さまざまな角度から上勝町の魅力をレポートしましたが、一体何が上勝町をここまで魅力的にしたのでしょうか?理由は数えればきりがないように思えます。今回の視察を通じて感じたことは、田中さんの「覚悟」と「行動力」、そして「上勝町の未来を信じてトライアンドエラーを繰り返す、その情熱」が今の上勝町をつくった最も重要な成功要因だったのではないか、と感じました。




【最後に】


最後までお付き合い頂きありがとうございました。


徳島県上勝町は「ゼロ・ウェイスト宣言の町」であること、「美味しいクラフトビールが飲めること」、そして何よりも町を想う人々の情熱が体現されている素晴らしい町でした。


ぜひ皆様も徳島県上勝町に足を運んでみてください。


ノンピからご紹介することもできますので、気になった方は是非お問い合わせからご連絡ください。



(左から)渡辺さん、溜本さん・田中さん・ノンピメンバー

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